【完全版】タンパク質合成の生理学的限界:1回100g摂取が「非効率」である科学的論拠

栄養・食事戦略
記事の執筆者
レイ

現役看護師 / 肉体改造家
スペック: ベンチ110kg / DL170kg / 体脂肪率15%
経歴: 80kgの肥満・対人恐怖症から、医学的知見と筋トレを武器に生還。
専門: 解剖学・生理学・脳科学に基づく「身体と習慣のハック」。
根性論を排し、科学的根拠(エビデンス)のみを記す。 刹那的な快楽を捨て、自己研鑽という「投資」へ。

レイをフォローする

3秒要約(結論)

  • 1回の最適摂取量は20~40g:これを超えると筋タンパク質合成率はプラトー(停滞)に達する。
  • ロイシン・スレッショルド:合成スイッチを入れるには、必須アミノ酸「ロイシン」の濃度が鍵となる。
  • 頻度がすべて:1日1回のドカ食いより、3〜4時間おきの分割摂取が血中アミノ酸濃度を維持し、アナボリック状態を最大化する。

「プロテインは1回で100g摂れば、その分だけデカくなる」という考えは、生理学を無視した暴論だ。
我々の身体は、タンパク質という「資材」を無限に受け入れる倉庫ではない。

一度に処理できる資材の量には、酵素の飽和点トランスポーターの限界が存在する。

看護師として臨床で代謝を観察し、ベンチプレス110kgを挙げる実践者として自らの肉体で検証した「タンパク質代謝の真実」を、ここに公開する。


1. 科学的比較:一括摂取 vs 分割摂取(1日100gの場合)

人体のアミノ酸プールのキャパシティを考慮した際の、合成効率の差は明白である。

比較項目 100gを一括摂取 25gを4回に分割
筋タンパク質合成(MPS) 一時的に上昇するが、数時間で終了。 24時間を通して高い値を維持。
ロイシン血中濃度 急上昇するが、余剰分は酸化・排泄される。 常に合成スイッチ(mTOR)がオンの状態。
内臓負荷(腎・肝) 窒素代謝の過程で多大な濾過負荷がかかる。 最小限の負荷で効率的に代謝・利用される。
体脂肪変換率 余剰エネルギーとして蓄積されるリスク大。 筋合成に優先利用され、無駄が少ない。
腸内環境 未消化分が悪玉菌の餌となり、腐敗ガスが発生。 消化酵素の範囲内で処理され、クリーンに保てる。

2. 消化管における「吸収」と「同化」の決定的な違い

読者が混同しやすい「消化吸収」と「筋タンパク質合成(MPS)」の違いを明確にする。

2-1. 吸収能力は「無限」に近い

小腸の表面積はテニスコート一面分ほどあり、100gのタンパク質を摂取しても、数時間をかけてそのほとんどがアミノ酸として血中に取り込まれる。
「吸収できないから下痢をする」というのは、消化酵素の不足や腸内環境の悪化という別問題だ。

2-2. 筋合成(MPS)には「飽和点」がある

問題は、吸収されたアミノ酸が「筋肉の合成に使われるかどうか」だ。
血中のアミノ酸濃度が一定レベルを超えると、筋肉の合成反応は頭打ちになる。これを「マッスル・フル効果(Muscle-Full Effect)」と呼ぶ。

余剰となったアミノ酸は、以下の経路を辿る。
・肝臓での酸化(エネルギー源としての燃焼)
・尿素回路による窒素排泄(腎臓への負荷)
・糖新生による糖質への変換、および体脂肪としての蓄積


3. ロイシン・スレッショルド:合成スイッチの力学

筋タンパク質合成(MPS)を起動させるメインスイッチは、細胞内のシグナル伝達経路であるmTOR(エムトール)だ。
このスイッチを入れるための鍵となるのが、必須アミノ酸の一種である「ロイシン」の血中濃度である。

3-1. 閾値(スレッショルド)の計算

最新の運動生理学において、若年層がMPSを最大化させるために必要なロイシン量は、1回あたり約2.5g〜3.0gとされる。
これを一般的な食品に換算すると以下のようになる。

  • ホエイプロテイン:約25g〜30g
  • 鶏胸肉:約120g〜150g
  • 卵:約4〜5個

3-2. 飽和するボーダーライン

筋タンパク質合成(MPS)の起動には、細胞内のシグナル伝達経路であるmTOR(エムトール)の活性化が必要だ。
このスイッチを入れるための鍵は、必須アミノ酸「ロイシン」の血中濃度に依存する。

「ロイシン摂取量が3.0gを超えた時点から、MPSの増加率はほぼゼロに収束する」

つまり、一度にプロテインを100g飲んでロイシンを10g摂取したとしても、筋肉に届くシグナルは3.0g摂取した時と大差ないのである。


4. 過剰摂取が招く「身体へのダメージ」:看護師の視点

「タンパク質は体に良い」という盲信は危険だ。過剰な摂取は、生体内の化学工場である肝臓と、濾過装置である腎臓に過酷な労働を強いる。

4-1. 窒素負荷と腎機能

アミノ酸がエネルギーとして利用される際、アミノ基が外され、有害なアンモニアが発生する。

肝臓で尿素に無毒化され、腎臓から排出されるが、100gといった過剰摂取はこのプロセスを激化させる。
慢性的な高タンパク摂取は、腎糸球体の濾過圧を高め、長期的には腎機能低下(CKD)のリスクを孕む。

4-2. 腸内フローラの崩壊

小腸で吸収しきれなかった余剰なタンパク質は大腸へと流れ込み、悪玉菌(ウェルシュ菌等)の餌となる。
その結果、腐敗発酵が起こり、以下の症状を誘発する。

  • 硫化水素やアンモニアによる強烈な放屁・便臭
  • 腸内環境悪化による肌荒れ
  • 慢性的な炎症反応による集中力の低下

5. 最適なデリバリー周期:4時間おきの「定点供給」

MPSの反応持続時間は、摂取後約3〜4時間でベースラインに戻ることが分かっている。
これを踏まえた、科学的根拠に基づく「最強の摂取プロトコル」は以下の通りだ。

タイミング 役割 推奨量
07:00 起床直後 睡眠中の枯渇状態を解除 20g (速攻型ホエイ)
12:00 昼食 午後の同化維持 30g (固形物:肉・魚)
16:00 間食 カタボリックの完全遮断 20g (卵/カゼイン)
19:00 筋トレ後 ゴールデンタイムの活用 30-40g + 炭水化物
23:00 就寝前 就寝中の分解防止 20g (緩慢吸収型)

Q&A:タンパク質摂取の疑問を科学的に破砕する

Q1. それでも、1日1食(OMAD)で一気に摂らざるを得ない場合は?
A. 結論から言えば、筋肥大効率は著しく落ちる。どうしても1食で摂取する場合、消化吸収の非常に遅いタンパク質(脂質の多い肉類やカゼイン等)を選択し、数時間かけて血中にアミノ酸を放出させる戦略を取るしかない。しかし、それでも分割摂取した群の方が、MPSの総量は有意に高いというデータが出ている。

Q2. トレーニング直後は「1回40g」以上摂るべきか?
A. 全身トレーニング(スクワット、デッドリフト等を含む高強度)を行った直後に限り、40g程度の摂取が20g摂取よりもMPSを約20%高めるという報告がある。動員された筋繊維が多いほど、受容できるキャパシティも一時的に拡大する。ただし、それでも100gは過剰だ。

Q3. 植物性タンパク質(ソイ等)でも20gで足りるか?
A. 否。植物性タンパク質は動物性に比べ、必須アミノ酸(特にロイシン)の含有率が低い。ホエイで20g相当の効果を得るには、ソイプロテインでは30g〜40g程度の摂取が必要になる。


結論:仕組みで肉体を変えよ

筋肉は「何を食べるか」ではなく「何が吸収され、利用されたか」で決まる。
100gのプロテインを流し込む安直な思考を捨て、3時間おきの緻密な供給をルーティン化せよ。

精神論で無理に食う必要はない。人体の設計図(生理学)に従い、スマートに栄養を流し込め。それが最短で理想の肉体を手に入れる唯一の道だ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました