【筋トレ分割法】初心者は「全身法」か「2分割」か?最短で身体を変えるための医学的根拠と選び方

肉体改造論

俺の名はレイ。

かつて体重80kgの肥満体型で、対人恐怖に震えていた男だ。
今はベンチプレス110kg、デッドリフト170kgを挙げ、現役の看護師として働きながら、男としての「強さ」を問い続けている。

今回は、筋トレを始めたばかりの男たちが必ずぶつかる壁、「分割法(スプリット)」について話す。

ネットで検索すれば、「初心者は全身法だ」「いや、ボディビルダーのように5分割すべきだ」といった情報が錯綜している。

結論から言おう。

もしお前が、ステロイドを使わない「ナチュラル」の一般男性であり、最短で身体を変えたいと願うなら、「5分割」は今すぐ捨てろ。

俺が医学的根拠と、自らの肉体改造の経験に基づき、初心者が選ぶべき「最適解」を提示する。
これは精神論ではない。生理学の話だ。

なぜ「分割法」の選択で失敗するのか?

多くの初心者が、「憧れのフィジーカー」や「プロボディビルダー」の真似をしてトレーニングメニューを組む。

「月曜は胸、火曜は背中、水曜は肩……」
いわゆる「ブロスプリット(5分割法)」だ。

だが、彼らの身体がなぜあそこまで巨大なのか考えたことはあるか?

彼らは遺伝的エリートであるか、あるいは何十年もの積み重ねがあるか、場合によっては「薬物」によるホルモンレベルの操作を行っている可能性がある。

俺たちのような、仕事を持ち、ストレスを抱え、普通の遺伝子を持つ男が彼らの真似をすればどうなるか。

「オーバーワーク」「刺激不足」のどちらかで成長が止まる。

看護師として言わせてもらうなら、筋肉はジムで作られるのではない。
「破壊(トレーニング)」後の「修復(回復)」のプロセスで作られるのだ。

この回復の生理学を無視した分割法は、ただの自傷行為に過ぎない。

決定的な判断基準:筋タンパク質合成(MPS)

どの分割法を選ぶべきか。その答えは、「筋タンパク質合成(Muscle Protein Synthesis:以下MPS)」の持続時間にある。

トレーニングによって筋肉に刺激が入ると、体内ではMPS(合成反応)が活性化する。
最新の研究や医学的見地において、ナチュラルの場合、このMPSが高まっている時間は「トレーニング後、約24時間〜48時間」とされている。

ここに「5分割法」の致命的な欠陥がある。

5分割法(週1回刺激)の罠

例えば月曜日に胸のトレーニングをしたとする。
MPSは火曜〜水曜あたりまで続く。ここまではいい。

だが、木曜・金曜・土曜・日曜の間、胸の筋肉はどうなっている?
「合成反応が止まったまま、次の月曜日を待っている」状態だ。

週7日のうち、成長しているのが2日だけで、残りの5日は現状維持。
これがいかに非効率か分かるはずだ。

初心者が最短で身体を変えるには、「MPSのスイッチを入れる頻度」を最大化する必要がある。

だからこそ、推奨されるのが「全身法」または「2分割法」なのだ。

選択肢①:全身法(Full Body Routine)

What:どのようなメソッドか
その名の通り、1回のトレーニングで胸・背中・脚・肩・腕、すべての主要筋肉群を鍛える方法だ。
基本的には「週2回〜3回」の頻度で行う。

Why:医学的・機能的メリット

1. 頻度の最大化
週3回行えば、各部位に週3回MPSのスイッチが入る。週1回の5分割に比べ、成長の機会は単純計算で3倍だ。

2. 神経系の適応(モーターラーニング)
筋トレ初心者がまずやるべきは、筋肉を太くすること以前に、「脳が筋肉を動かす指令(神経伝達)」をスムーズにすることだ。
ベンチプレスを週1回やるのと、週3回やるのとでは、フォームの習得スピードが桁違いだ。自転車の練習と同じで、回数をこなすほど上手くなる。

3. ホルモン応答
スクワットやデッドリフトなどの多関節種目(コンパウンド種目)を毎回行うため、テストステロンや成長ホルモンの分泌を全身的に促しやすい。

デメリットと対策

1回の時間が長くなる
全身やるには時間がかかる。
対策としては、腕や肩単体などの「アイソレーション種目」は削り、BIG3(ベンチ・スクワット・デッドリフト)を中心に組むことだ。

後半バテる
脚トレの後にベンチプレスをやれば、力が出ないのは当然だ。
毎回種目の順番を入れ替える、あるいは「今日は上半身メインの日」「今日は下半身メインの日」と、全身法の中でも強弱をつけることで解決できる。

向いている男

  • 筋トレ歴半年未満の完全初心者
  • BIG3のフォームがまだ固まっていない者
  • 週に2〜3回しかジムに行けない多忙な社会人

選択肢②:2分割法(Upper / Lower Split)

What:どのようなメソッドか
身体を「上半身(Upper)」「下半身(Lower)」の2つに分け、交互に鍛える方法だ。
例:月(上)・火(下)・水(休)・木(上)・金(下)・土日(休)

Why:医学的・機能的メリット

俺が個人的に最も推奨するのがこの分割法だ。理由は「強度と回復のバランス」が極めて優れているからだ。

1. 1部位あたりのボリューム確保
全身法では胸に1種目しか割けなかったとしても、2分割なら上半身の日に2〜3種目を採用できる。これにより、筋肉を多角的に刺激できる。

2. 回復時間の確保
上半身を鍛えている間、下半身は休んでいる。逆もまた然りだ。全身法よりも局所的な疲労を抜きやすく、高い強度を保てる。

3. 週2回の頻度維持
週4回トレーニングすれば、各部位は週2回刺激される。これは多くのメタアナリシス(研究データの統合解析)において、筋肥大に最も効率的とされる頻度と一致する。

デメリットと対策

「脚の日」の過酷さ
下半身の日(スクワット、レッグプレス、デッドリフト等)は、強烈なエネルギーを消費する。逃げ出したくなるほどのキツさがある。
対策は、こればかりは「精神力」だ。だが、人体で最大の筋肉である脚を鍛えることは、全身の代謝アップに直結する。逃げるな。

スケジュールの固定化
週4回(最低でも週3回)のジム通いが必要になる。

向いている男

  • 脱初心者(BIG3のフォームはある程度できる)
  • 全身法では筋肉痛が治りきらない、または物足りなくなってきた者
  • 週4回の時間を捻出できる覚悟のある男

【結論】お前はどちらを選ぶべきか?

迷っている暇があればバーベルを握るべきだが、指針を示そう。

ケースA:ジムに入会したばかりの「Lv.1」

迷わず「全身法」を選べ。
週3回(月・水・金)、BIG3を中心に徹底的にフォームを体に叩き込め。
筋肉をつける前に、まずは「鉄の重さ」に慣れる神経系を作れ。
これを3ヶ月続けろ。身体のラインが変わり、扱える重量が面白いくらい伸びるはずだ。

ケースB:3ヶ月以上経過し、停滞を感じる「Lv.5」

「2分割法」へ移行せよ。
全身法で扱える重量が増えてくると、全身の疲労度が大きくなりすぎて、1回のトレーニングで全力を出し切れなくなる。
それが「卒業」の合図だ。
上半身と下半身に分け、1部位ごとの種目数を増やし、さらなる刺激を与えろ。

分割法を支える「武器(アイテム)」の重要性

ここまで読めば理解できたはずだ。
効率的な分割法とは、「いかに高頻度で、身体に炎症(刺激)を与えるか」の戦いである。

つまり、回復が追いつかなければ、どんなに優れた分割法も「怪我」と「疲労」で破綻する。
現役看護師として警告する。根性で回復はできない。物理的な栄養とケアが必要だ。

自分の身体を実験台にするな。確実な「武器」を使え。

1. 筋合成の材料:ホエイプロテイン

高頻度でスイッチが入るMPS(筋合成)に対し、材料(アミノ酸)が不足していれば、筋肉は分解されるだけだ。
工事現場に大工(刺激)だけ呼んで、木材(タンパク質)がない状態にするな。
トレーニング直後だけでなく、血中のアミノ酸濃度を一定に保つ意識を持て。

2. トレーニング中の命綱:EAA/BCAA

トレーニング中、エネルギーが枯渇すると身体は自らの筋肉を分解し始める(カタボリック)。
これを防ぐために、消化吸収の速いアミノ酸ドリンクをワークアウト中に摂取しろ。
最後まで集中力を切らさないためにも必須だ。

3. 関節という消耗品を守る:グルタミン・マルチビタミン

高頻度のトレーニングは、筋肉だけでなく免疫系や関節にも負担をかける。
風邪を引いて1週間寝込めば、積み上げた筋肉は一瞬で萎む。
体調管理もトレーニングの一部だ。微量栄養素を疎かにする男に、強靭な肉体は宿らない。

Q&A:よくある質問への回答

最後に、初心者が抱きがちな疑問に答えておく。

Q1. 毎日ジムに行ってはいけないのか?

A. 初心者はやめておけ。
「もっとやりたい」という気持ちは分かる。だが、筋肉は寝ている間に成長する。
毎日やるということは、回復の時間を削るということだ。
また、関節や腱の強度は筋肉よりも成長が遅い。毎日高負荷をかければ、確実に怪我をする。
「休む勇気」を持て。それが大人の男のトレーニングだ。

Q2. 1回のトレーニング時間はどれくらいがベストか?

A. 60分〜75分以内に収めろ。
ダラダラと2時間も3時間もジムにいる奴がいるが、逆効果だ。
長時間のトレーニングは、筋肉を分解するストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を増やす。
集中して、短時間で全力を出し切り、さっさと帰って栄養を摂れ。

Q3. 筋肉痛が来ないと効果がないのか?

A. その認識は間違いだ。
筋肉痛はあくまで「不慣れな刺激」や「伸張性収縮による微細な損傷」の指標の一つに過ぎず、筋肥大の絶対条件ではない。
重要なのは「前回よりも重い重量が挙がったか」「回数が増えたか」という「漸進性過負荷(プログレッシブ・オーバーロード)」の原則だ。
痛みの有無より、成長の記録(ログ)を信じろ。

Q4. 腹筋はどの日にやるべきか?

A. 余裕がある日ならいつでもいい。
腹筋は回復が早い筋肉だが、スクワットやデッドリフトでも強烈に使われている。
全身法なら毎回最後に2〜3セット、2分割なら下半身の日の最後に組み込むのが一般的だ。
ただし、腹筋を割るために必要なのはトレーニング以上に「体脂肪を落とす食事管理」であることを忘れるな。

最後に:完璧な計画より、泥臭い継続を

全身法か、2分割か。
どちらを選んでも間違いではない。

最大の失敗は、「どっちがいいんだろう」と悩み続けて、今日ジムに行かないことだ。

俺も最初は、見よう見まねの全身法から始めた。
80kgのただのデブだった俺が、ベンチプレス110kgを挙げるまでになれたのは、魔法の分割法を見つけたからではない。

「決めたルールを、淡々と守り続けた」
ただそれだけだ。

理屈は俺が教えた。
あとはお前がやるか、やらないかだ。

今すぐシューズを履け。ジムに行け。
未来の自分を作るのは、今の動作だけだ。

レイ


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