「本番はベンチプレス60kg。それなのに、準備の50kgを10回やった時点で腕が疲れる」。そんなときは、準備運動の回数を見直してみましょう。
ウォームアップの目的は、本番前に追い込むことではなく、動作と負荷を確認すること。軽い重量から始め、本番に近づくほど回数を減らす方法が一つの出発点になります。ただし、全員に必要なセット数や最適な回数が決まっているわけではありません。
この記事は、健康な成人が普段の筋トレを行う場面を想定しています。最大重量の挑戦や、痛みからの復帰のための個別プログラムではありません。
ウォームアップと本番セットは、役割を分ける
ここでいう本番セットは、あらかじめ決めた重量・回数で練習するセットです。その前の準備セットでは、器具の設定、動作の軌道、その日の重さの感じ方を確認します。
準備のたびに「あと1回もできない」ところまで頑張る必要はありません。軽い重量でも回数を多く重ねれば、その後の練習に影響する可能性があります。汗の量や筋肉の張りだけで、準備が十分かを決めないようにしましょう。
本番60kg×10回を目指す日のウォームアップ例
すでに60kgを扱う練習をしていて、20kgのバーを無理なく動かせる人なら、次のように段階を作る方法があります。
| 段階 | 重量・回数の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 準備1 | 20kg×10回 | 握り位置、器具の設定、動作の軌道 |
| 準備2 | 40kg×5回 | 重さを増やしても同じ動作を保てるか |
| 準備3 | 50kg×2〜3回 | 本番に近い重さを、余裕を残して確認 |
| 本番 | 60kg×10回を目標 | その日の状態に合わせ、無理なら重量・回数を調整 |
これは考え方を示す実践例であり、研究で最適と証明された組み合わせではありません。3セットが必須という意味でも、準備をすれば60kgを10回挙げられるという保証でもありません。重量はバーとプレートを合わせた重さです。
20kg自体が重い場合は、この表を使わず、軽いバーやダンベル、マシンなどで扱える負荷から始めてください。器具ごとの重量表示も同じとは限りません。初めてのベンチプレスで、この表に合わせるために60kgへ進む必要はありません。
ベンチプレスでは、セーフティの設定と使い方を軽い負荷で確認し、不安があればスタッフや指導者に相談します。準備セットでも補助のない限界挑戦は避けましょう。
何セット必要?「追加する・減らす・本番へ」の判断
セット数を先に固定するより、次のように状態を確認します。以下は個別の運動処方ではなく、練習を整理する目安です。
| 今の状態 | 次の選択 |
|---|---|
| 軽い負荷で動作が安定し、疲れも強くない | 準備をむやみに増やさず、必要な段階を経て本番へ |
| 器具や種目に不慣れで、動作が安定しない | 軽い負荷の動作確認を追加。重くする前に指導を受ける |
| 本番までの重量差が大きい | 途中の重量を挟み、少ない回数で確認する |
| 準備の段階で腕が疲れる、息が上がる | まず休む。回数やセット数、本番の負荷も見直す |
| 鋭い痛みや普段と違う症状がある | 温まれば大丈夫と押し切らず、その練習を中止する |
「準備を減らす」は、いきなり重いセットに飛び込むことではありません。例えば50kg×10回で毎回疲れるなら、次回は50kgの回数を減らし、動作と本番の記録を比べます。同時に重量や種目順を大きく変えない方が、自分の反応を確認しやすくなります。
研究では、準備セットの量について何が分かっている?
少ない回数の準備が有利だった研究もある
2024年の研究では、筋トレ経験が6か月以上ある男性15人が、10回挙げられる最大重量(10RM)の40%で15回、60%で10回、80%で5回という準備を比較しました。80%で5回の条件では、その後の総トレーニング量が他の条件より多くなりました。研究の抄録(Viveirosら、2024年)
ただし、重量と回数が同時に変わっているため、「回数だけが原因」とは言えません。初心者全員に80%×5回が最適と決める根拠でもありません。本記事の60kgの表は、この研究の手順を再現したものではありません。
準備を増やしても差が出なかった研究もある
2025年の研究では、筋トレ経験者29人が、準備なし・1セット・2セットの条件で、スミスマシンのベンチプレスとレッグプレスを行いました。その条件では、本番の反復回数や総挙上量などに大きな違いは見られませんでした。研究(Enesら、2025年)
これは「初心者も準備しなくてよい」という意味ではありません。経験者の短期的な成績を調べたもので、初めての種目や、さらに重い負荷、長期の筋肥大、けが予防まで同じ結果になるとは判断できません。
研究から一つの万能なセット数は決まりません。本記事では、必要な動作確認をしつつ、準備だけで疲れ切らないよう調整する考え方を提案しています。
準備セットの間も休んでいい?
休んで構いません。軽い段階では器具を整えて次の動作を確認し、重くなるほど呼吸や姿勢を落ち着ける時間を確保します。「ウォームアップだから休憩なし」と決める必要はありません。
最後の準備セットの後も、腕の疲れや息切れが強いまま本番を始めないでください。本番のセット間休憩については、筋トレの休憩時間の目安と調整法で整理しています。
2種目目以降も、同じ準備を繰り返す?
必ず最初から同じセット数を行う必要はありません。ただし、身体が温まっていることと、次の器具の設定や動作に慣れていることは別です。
例えば胸のプレスから脚のマシンへ移るなら、脚の動作とシート位置を軽い負荷で確認します。同じ胸の種目へ移る場合も、前の種目の疲労は残り得ます。「もう温まったから」と普段より重くするのではなく、その器具で安定して動けるかを見てください。
次回は「準備」と「本番」を分けて記録する
- 準備:20kg×10回、40kg×5回、50kg×3回
- 本番:60kg×9回
- 状態:準備後の疲れは軽い。最後の反復で動作が乱れそうになり終了
- 次回:同じ準備で本番の動作と回数を確認する
これは架空の記録例です。準備セットで回数を競うのではなく、本番に入ったときの動きやすさを記録しましょう。日による変動もあるので、1回の結果だけで成功・失敗を決める必要はありません。
重さが普段と大きく違って感じる日には、寝不足の日の筋トレとメニュー調整も参考になります。痛みが続く場合や運動制限がある場合は、一般的な準備の例より医療者の指示を優先してください。
まとめ|準備で頑張りすぎず、本番につなげる
軽い負荷で動作を確認し、必要に応じて重量を段階的に上げる。本番に近い準備では、回数を減らして余裕を残す。これを出発点に、種目への慣れとその日の疲れで調整しましょう。
大切なのは「何セット準備したか」より、予定した練習を落ち着いて始められるかです。
画像:Eduardo Cano Photo Co. / Unsplash。バーベルのイメージ写真で、本文の重量・フォームを示すものではありません。
情報確認日:2026年10月28日。研究結果と実践例を区別して記載しています。本記事は一般的な運動情報であり、個別の診断・治療や対面での運動指導の代わりにはなりません。

